IV抗HIV治療の開始時期(成人、慢性期)

本章は、慢性期の成人HIV感染者に対する初回治療について記述している。治療失敗例についてはVIを、急性HIV感染症についてはXIIIを参照されたい。

2.本ガイドラインが提唱する治療開始時期基準

 上記のこれまでのエビデンスとDHHSのガイドライン5)、EACSガイドライン6)、WHOガイドライン30)を参考にして、表IV-2に本ガイドラインが提唱する抗HIV治療の開始の目安を示す。CD4数に関わらずすべてのHIV感染者に治療開始を推奨する(AI)。ただし身体障害者手帳や自立支援医療などの利用に関して十分に検討することを忘れてはならず、注意を促す文章を記した(表IV-2)。

 (参考:HIVによる免疫の機能の障害に係る身体障害認定基準は、厚生労働省HP内(http://www1.mhlw.go.jp/shingi/s1216-3.html)からも参照できる。)

 HIV感染症の診断時にAIDSを発症している症例でも抗HIV治療を開始する(AI)。しかしながらニューモシスチス肺炎やクリプトコッカス髄膜炎など重篤なエイズ指標疾患を合併する症例では、その治療を優先させる必要がある。抗HIV治療を開始して細胞性免疫の回復が得られるまでには少なくとも1〜2ヶ月を要する。その間に抗HIV治療の副作用が出現し、日和見感染症の治療の障害となるようでは本末転倒の結果となる。AIDS指標疾患のうち非結核性抗酸菌症やCMV感染症は抗HIV治療を開始後に免疫再構築症候群を合併する頻度が高いので(IX参照)、状況が許せば1ヶ月程度日和見疾患の治療を先行させた方が抗HIV療法を順調に開始できる場合もある。しかし、急性の日和見感染症合併例についてもできるだけ早期の治療開始が好ましいとする報告もあり31)、この点の判断は専門医の意見を参考にすることが望ましい。

 治療開始に際しては、服薬遵守の重要性を教育することや医療費減免のための社会資源の活用方法などについても詳しく説明しておく必要がある。早期の治療開始が推奨されようになった近年はこれらへの配慮が以前にも増して重要となっている。この点に関する情報は、厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業「服薬アドヒアランスの向上・維持に関する研究」班が作成した「HIV診療における外来チーム医療マニュアル」、関東甲信越HIV/AIDS情報ネットが作成している「制度の手引き」が参考になる。ともにホームページからダウンロード可能であるので参照されたい32, 33)

IV-2 抗HIV薬治療の開始時期の目安

CD4数に関わらず、すべてのHIV感染者に治療開始を推奨する(AI)

注1:

抗HIV療法は健康保険の適応のみでは自己負担は高額であり、
医療費助成制度(身体障害者手帳)を利用する場合が多い。

主治医は医療費助成制度(身体障害者手帳)の適応を念頭に置き、
必要であれば治療開始前にソーシャルワーカー等に相談するなど、十分な準備を行うことが求められる。

注2:
エイズ指標疾患が重篤な場合は、その治療を優先する必要のある場合がある。
注3:
免疫再構築症候群が危惧される場合は、エイズ指標疾患の治療を優先させる。

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