V初回治療に用いる抗HIV薬の選び方

要約

  • 十分な抗ウイルス効果を得るには、NRTI 2剤+INSTI 1剤、NRTI 2剤+PI 1剤(rtv併用)、NRTI 2剤+NNRTI 1剤、いずれかの組み合わせを選択する。具体的な薬剤の選択に際しては、副作用、食事との関連、錠剤数、薬剤の大きさなどの点から患者に最も適したものを選び、服薬率100%を目指す。
  • 服薬率を維持するためには、1日1回投与の処方が有利であり、今後新規に治療を開始する症例には積極的に選択すべきである。
  • 本章では、日本のHIV感染症の専門医たちが実際にどのような抗HIV薬およびその組み合わせを選択しているかについて最新の情報を記載した。診療経験の少ない医師は、専門医がどのような薬剤を選択しているかを理解し、自身での選択の参考にしていただきたい。

1.抗HIV薬選択の基本

 2019年3月の時点で、日本で使用可能な抗HIV薬を表V-1に示す。作用機序によりヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NRTI)、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、プロテアーゼ阻害剤(PI)、インテグラーゼ阻害剤(INSTI)、侵入阻害剤に分類される。これらの抗ウイルス薬を組み合わせて治療する抗レトロウイルス療法(ART)が治療の標準である。抗HIV薬の中でHIVを抑制する効果がより強力な薬剤を「キードラッグ」、キードラッグを補足しウイルス抑制効果を高める役割をもつ薬剤を「バックボーン」と呼ぶが、それぞれの分類に関して明確な定義はない。現在は、バックボーンをNRTI2剤とし、キードラッグを1剤(薬剤によってはrtvを併用)とする組み合わせが一般的である。しかし、今後新たな作用機序を有する薬剤が開発されたり、既存薬剤の新たな組み合わせの効果が認められたりすれば、このような分類が変化する可能性がある。具体的にどの薬剤を選ぶかについては以下に示すように抗ウイルス効果、副作用、内服しやすさを考慮して決定する。

 Bartlettらは、1994〜2004年に結果が公開されたARTの臨床試験で、参加者が初回治療患者に限定され、1つの治療メニュー(arm)に30名以上が参加し、24週以上フォローアップが行われたものの治療成績の集計した1)。図V-1に示すように、ART開始後48週目の血中HIV RNA量が50コピー/mL未満となる患者の割合が高かったのは、キードラッグがNNRTIか、rtvを併用したPI(boosted PI)を含むARTであった。その後、新たに登場したキードラッグであるINSTIもNNRTIやPIとの比較試験の結果、優れた抗ウイルス効果が証明されている(後述)。

 また、NRTIを使用せずに、キードラッグであるLPV/rとEFVの2剤のみを投与した臨床試験が報告されている2)。これによれば「LPV/r+EFVの2剤」群のウイルス抑制効果は「NRTI 2剤+EFV」群と同等であったが薬剤耐性ウイルスの出現率が高く、結果としてキードラッグ2剤併用をもってしても、従来の「NRTI2剤+キードラッグ1剤」群を凌駕することはできなかった。しかし近年、ミトコンドリア障害に代表されるNRTIによる副作用を軽減するために、NRTIを使用しないNRTI-sparing regimenが再評価されつつある。長期療養時代に入った現在のHIV感染症では医療費抑制の観点からもNRTI-sparingに限らない2剤併用療法は選択肢の一つと考えられつつある。まだ初回治療として推奨できるようなエビデンスは乏しいが、現状のARTで良好なウイルスコントロールが得られている患者に2剤療法への変更は考慮してもよい可能性がある。2018年11月には抗HIV薬既治療患者に対して、DTGとRPVの合剤(ジャルカ配合錠®)が日本で承認された(後述)。最新の海外のガイドラインでは、いくつかの2剤治療が初回治療の代替レジメンとして挙げられている3, 4, 5)

V-1 日本で承認されている抗HIV薬(2019年3月現在)
ヌクレオシド/ヌクレオチド系逆転写酵素阻害剤(NRTI)
一般名 商品名 略称 承認時期
ジドブジン レトロビルカプセル AZT(またはZDV) 1987年11月
ラミブジン エピビル錠 3TC 1997年2月
ジドブジンとラミブジンの合剤 コンビビル錠 AZT/3TC(またはCBV) 1999年6月
アバカビル ザイアジェン錠 ABC 1999年9月
テノホビル ビリアード錠 TDF 2004年4月
アバカビルとラミブジンの合剤 エプジコム錠 ABC/3TC(またはEPZ) 2005年1月
エムトリシタビン エムトリバカプセル FTC 2005年4月
エムトリシタビンとテノホビルの合剤 ツルバダ錠 TDF/FTC(またはTVD) 2005年4月
エムトリシタビンとテノホビルアラフェナミドの合剤 デシコビ配合錠LT・HT TAF/FTC(またはDVY) 2016年12月
非ヌクレオシド/ヌクレオチド系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)
一般名 商品名 略称 承認時期
ネビラピン ビラミューン錠 NVP 1998年12月
エファビレンツ ストックリンカプセル/錠 EFV 1999年9月
エトラビリン インテレンス錠 ETR 2009年1月
リルピビリン エジュラント錠 RPV 2012年5月
リルピビリン、エムトリシタビン、テノホビルの合剤 コムプレラ配合錠 RPV/TDF/FTC(またはCMP) 2014年12月
リルピビリン、エムトリシタビン、テノホビルアラフェナミドの合剤 オデフシイ配合錠 RPV/TAF/FTC (またはODF) 2018年8月
プロテアーゼ阻害剤(PI)
一般名 商品名 略称 承認時期
ネルフィナビル ビラセプト錠 NFV 1998年3月
リトナビル ノービア・ソフトカプセル/リキッド RTV 1999年9月
ロピナビル(少量リトナビル含有) カレトラ錠/リキッド LPV/r 2000年12月
アタザナビル レイアタッツカプセル ATV 2004年1月
ホスアンプレナビル レクシヴァ錠 FPV 2005年1月
ダルナビル プリジスタ錠(600mg) DRV 2015年5月
プリジスタナイーブ錠(800mg) DRV 2013年11月
ダルナビルとコビシスタットの合剤 プレジコビックス配合錠 DRV/c(またはPCX) 2016年11月
インテグラーゼ阻害剤(INSTI)
一般名 商品名 略称 承認時期
ラルテグラビル アイセントレス400㎎錠 RAL 2008年6月
アイセントレス600㎎錠 RAL 2018年5月
エルビテグラビル、エムトリシタビン、テノホビル、コビシスタットの合剤 スタリビルド配合錠 EVG/cobi/TDF/FTC(またはSTB) 2013年5月
エルビテグラビル、エムトリシタビン、テノホビルアラフェナミド、コビシスタットの合剤 ゲンボイヤ配合錠 EVG/cobi/TAF/FTC(またはGEN) 2016年6月
ドルテグラビル テビケイ錠 DTG 2014年3月
ドルテグラビル、アバカビル、ラミブジンの合剤 トリーメク配合錠 DTG/ABC/3TC(またはTRI) 2015年3月
ドルテグラビル、リルピビリンの合剤 ジャルカ配合錠 DTG/RPV(略称なし) 2018年11月
注:抗HIV薬既治療患者に使用
ビクテグラビル、エムトリシタビン、テノホビルアラフェナミドの合剤 ビクタルビ配合錠 BIC/TAF/FTC 2019年3月
侵入阻止薬
一般名 商品名 略称 承認時期
マラビロク シーエルセントリ錠 MVC 2009年1月
V-1 ARTのキードラッグと治療成績
縦軸が治療成績(%)の、それぞれPI、NRTI、Boosted PI、NNRTIの棒グラフ。PIは約41%、NRTIは約55%、Boosted PIとNNRTIはそれぞれ約62%。
過去に実施された53種類のARTの臨床試験について、キードラッグと治療成績(開始48週目に血中HIV RNA量が50コピー/mL未満の症例の割合)を比較した(Bartlett et al., AIDS 20: 2051, 2006より)

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