V初回治療に用いる抗HIV薬の選び方

5.わが国で実際に使用されている抗HIV薬とARTの組み合わせ

 前項で抗HIV薬の選択に関する基本原則を説明したが、最終的には複数の組み合わせの中からどれかを選択することになるので、経験の少ない医師にとってはその意思決定に常に不安を伴う。そこで本項では、HIV診療の経験のある医師が実際にどのような薬剤を選択しているかについて、わが国の実態を紹介する。

 図V-3は、日笠らが毎年行っている「服薬援助のための基礎的調査」からのデータで、初回治療に処方されたARTメニューの抗HIV薬の組み合わせを示している66)。好んで使われる薬剤の組み合わせが、時代とともに変化していることがわかる。2018年の集計は3月までのデータであり、今後変化する可能性がある点に注意して頂きたい。

 「ガイドライン」とは今わかっている範囲で最も良いと思われる治療方針を示すもので、明日以降も最も良いかどうかはわからない。もっと良い治療法が開発されれば、すぐに改訂される。抗HIV薬は今後もより効果が強く、より飲みやすく、より副作用が少ない薬剤の開発が予想される。さらに、どの薬剤を組み合わせるのが良いのかに関しても新しいデータが蓄積されていく。したがって、推奨薬剤は頻繁に変更されており、処方薬剤は時代によって図V-3に示すとおり大きな変動がある。この中の2018年のデータもある程度まとまった症例数の処方状況として提示できる最新のものであるが、これすらも集計時の定点観測であって既に過去であることを認識して頂きたい。

図V-3 わが国での初回ARTメニューの変化
2013年から2017年までの割合グラフ。2013年のときn=525で、TDF+FTC+EFVは数%、TDF+FTC+RALは約40%、TDF+FTC+DRV/rは約30%、ABC+3TC+RALは約5%、その他が9.1%。2014年のときn=491で、TDF+FTC+RALとTDF+FTC+DRV/rは20%強、ABC+3TC+DRV/rとABC+3TC+RALは約10%弱、TDF+FTC+EVG+cobiは約20%、その他が14.9%。2015年のときn=448で、TDF+FTC+RALは約10%強、TDF+FTC+DRV/rは約5%、TDF+FTC+EVG+cobiは約20%弱、TDF+FTC+DTGは約30%弱、ABC+3TC+DTGは約20%強、その他が8.0%。2016年のときn=765で、TDF+FTC+RALは約10%、TDF+FTC+DRV/rは数%、TDF+FTC+EVG+cobiは約10%強、TDF+FTC+DTGは約40%、ABC+3TC+DTGは約40%強、その他が9.3%。2017年のときn=684で、TDF+FTC+RALは約10%、TDF/TAF+FTC+DRVr/PCXは数%、TDF+FTC+EVG+cobiは約20%弱、TDF/TAF+FTC+DTGは約20%、ABC+3TC+DTGは約40%弱、その他が7.0%。

*2017年は3月までの集計

日笠ら「抗HIV療法と服薬援助のための基礎的調査」(2018年 日本エイズ学会、抄録番号O9-043)より作成

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