VIII抗HIV薬の副作用

9.リポアトロフィー

 抗HIV薬を長期間内服している患者で、リポアトロフィーと呼ばれる体脂肪の分布異常(腹部内臓脂肪の増加と、手足・顔面の皮下脂肪の減少)が生ずることが報告されている73, 74)。明確な原因は不明であるが、脂肪細胞のミトコンドリアDNA量の減少が認められることからNRTIのミトコンドリアDNAポリメラーゼγ活性阻害が一因と推測されている。d4T(現在は発売中止)の使用者でリポアトロフィーの頻度が高いことはこの仮説と符合するが、PIの使用との関連も示唆されている。ART開始後数ヶ月ほど経てから徐々に明らかとなり、報告・定義により異なるが25〜75%の症例に発症するとされる75)。高度のリポアトロフィー例は頬のやせた特有の顔貌になり、美容上の観点から患者には苦痛となる。

 リポアトロフィーは、QOLの低下、服薬アドヒアランスに影響をもたらす有害事象であり、その予防・対応については、チミジンアナログを回避し、ABCもしくはTDFやTAFの使用がすすめられている25)。McComseyらはART未経験者におけるABCまたはTDFを含むART開始後の脂肪量の増加及びリポアトロフィー(四肢における10%以上の脂肪量の減少)の発症率が16.3%と報告している76)。(図VIII-4)

VIII-4 チミジンアナログ(AZT, d4T)から変更後の脂肪量の推移
縦軸がChange in fat mas(g)で横軸が時間(週)の、ABCとTDFの、全身における脂肪量の推移を計測した折れ線つき箱ひげ図。24週間後、計測開始と比較してABCは最大値が1000g弱、中央値が約500g、最小値が数十gとなり、TDFは最大値が1000g、中央値が約600g弱、最小値が数十gの増加となった。48週間後、ABCは最大値が1600g、中央値が約1100g、最小値が600gとなり、TDFは最大値が1600g弱、中央値が1000g弱、最小値が400g弱の増加となった。
縦軸がChange in fat mas(g)で横軸が時間(週)の、ABCとTDFの、四肢における脂肪量の推移を計測した折れ線つき箱ひげ図。24週間後、計測開始と比較してABCは最大値が400g、中央値が200g、最小値が数十gとなり、TDFは最大値が400g弱、中央値が200g弱、最小値がマイナス数十gとなった。48週間後、ABCは最大値が800g弱、中央値が約500g弱、最小値が約300g弱となり、TDFは最大値が600g弱、中央値が400g弱、最小値が100g弱となった。
縦軸がChange in fat mas(g)で横軸が時間(週)の、ABCとTDFの、体幹における脂肪量の推移を計測した折れ線つき箱ひげ図。24週間後、計測開始と比較してABCは最大値が600g弱、中央値が400g弱、最小値がマイナス数十gとなり、TDFは最大値が約700g、中央値が400g弱、最小値が数十gとなった。48週間後、ABCは最大値が1000g弱、中央値が約600g、最小値が約300gとなり、TDFは最大値が約1000g、中央値が約600g、最小値が200g強となった。
 

AZTまたはd4TからABCまたはTDFに変更したあとの脂肪量の推移について、DEXAを用いて計測した変化を示す。

Moyle GJ, et al. AIDS. 20:2043-2050, 2006

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