XIHIV/HBV共感染者での抗HIV療法

8.HIV/HBV共感染におけるB型慢性肝炎治療時の問題点と対応

①HBV治療を兼ねたART開始による免疫再構築

 HBV感染による肝障害の機序は主に細胞性免疫を介したものであるため、ART開始後に免疫再構築の結果として一過性のトランスアミナーゼ上昇がみられることがある。トランスアミナーゼが基準値の5〜10倍を越える場合には、治療の中止も考慮するとされている。しかしこの一過性の肝障害は、HBe抗原からHBe抗体へのセロコンバージョン期にあたっている場合もあり、トランスアミナーゼ値が1000IU/mLを越えずT-bil値の上昇やPTの延長が見られなければ、諸種肝炎マーカーを慎重にモニターしながら、治療を継続する方が望ましいと思われる(BIII)13, 14)

②ARTレジメンとしてテノホビル(TDFまたはTAF)が使用できない場合

 副作用やウイルス学的治療失敗の理由でテノホビルが使用できない場合には、テノホビルを含まないARTレジメンにエンテカビルを併用する(AII)13, 14)。この際、ラミブジン耐性HBVの場合にはエンテカビルは通常量の0.5 ㎎/dayではなく、倍量の1mg/dayで投与し、さらに3か月ごとにHBV-DNAを検査し、ブレイクスルーに注意する13, 14)。エンテカビルが使用できない場合にはペグインターフェロンの投与を検討するが、非代償性肝硬変の状態では使用できない(CII)13, 14)。アデホビルは腎障害の副作用、terbivudine(本邦では承認されていない)はミオパチーやニューロパチーの副作用のリスクがあるため、一般的に推奨されない13, 14)

③治療のゴール時期が不明確である

 HBV療法の当初の目標は、HBV DNA量を検出感度未満に低下させること、次いでHBe抗原陽性からHBe抗体陽性へのセロコンバージョン、更にHBs抗原陽性からHBs抗体陽性へのセロクリアランスである。しかしながら最も強力な組み合わせの一つであるTDF+3TCを用いたARTを129週施行した研究においても、HBe抗原陽性からHBe抗体陽性へのセロコンバージョン率は36%、HBs抗原陽性からHBs抗体陽性へのセロクリアランス率は4%にすぎず24)、HBVは肝細胞核内に共有結合性閉環状DNA(Hepatitis B virus covalently closed circular DNA(HBV cccDNA))という形で遺伝子情報を残すため、現状では核酸アナログによる抗HBV療法は長期間を要し中途で終了することはできないと考えられる(AIII)。抗HBV療法の最終的なゴールをHBs抗原の陰性化とすべきであるというコンセンサスが拡がっており、ヌクレオシド(ヌクレオチド)系逆転写酵素阻害剤の投与に加えてペグインターフェロンを追加投与すべきであるとする専門家も増えており症例毎に考慮されるべき問題であると思われる(BIII)。

 HIV/HBVの共感染者においてはHIV、HBV双方に対して多剤併用療法を行うべきであるということは世界的なコンセンサスとなっている。しかし核酸アナログによる抗HBV療法に関する経験は抗HIV療法に比べ歴史が浅く、治療法の推奨は新たな薬剤の出現とともに今後も変更が加わっていくと思われる25)

④HIV/HBV共感染者で腎障害があるときの対応

 クレアチニン・クリアランス(CrCL)が60mL/min以上であれば、TDF/FTCもしくはTAF/FTCの投与が可能であるが、CrCLが30から60mL/minまでの場合はTAF/FTCを選択することになる。しかしCrCLが30mL/min未満の場合には腎障害調節量でのエンテカビルの使用を検討する(BIII)13, 14)。エンテカビルは、1)CrCLが30mL/min以上50mL/min未満では通常用量0.5mgを2日に1回、ラミブジン不応患者では1mgを2日に1回、2)CrCLが10mL/min以上30mL/min未満では通常用量0.5mgを3日に1回、ラミブジン不応患者では1mgを3日に1回、3)CrCLが10mL/min未満では通常用量0.5mgを7日に1回、ラミブジン不応患者1mgを7日に1回、4)血液透析又は持続携行式腹膜透析(CAPD)患者に対しては通常用量0.5mgを7日に1回、ラミブジン不応患者1mgを7日に1回(血液透析日は透析後に投与)の投与である(エンテカビル(バラクルード®)添付文書より)。

 Reijnders JGらは、TDFをバックボーンにした抗HIV/HBV療法を5年間使用した症例において、ウイルス学的な経過は良好であるものの腎障害が問題となることを指摘している26)。TDFによる腎障害は不可逆性になることも経験されているため27)、eGFRが60未満となる以前、あるいはリン再吸収率(%TRP)が70%未満となる以前に薬剤変更を考慮すべきであろう(BIII)。

⑤そのほかの問題点

 HIV感染に気付かずにラミブジンを長期使用してしまった症例では、YMDDmotifでの変異の存在に加えて1塩基置換が加わるだけでエンテカビルに対しても耐性化してしまう可能性がある28)。こうした症例でテノホビルを使用し腎障害を招来してしまった場合には、テノホビルをエンテカビルへ直ちに置換せずに隔日投与を試みる、あるいはペグインターフェロンの併用を考慮するなどの工夫が必要となるであろう。

 ドルテグラビル(DTG)が2013年10月の抗HIV療法ガイドライン(DHHS)でABC/3TCとの組み合わせにおいてもPreferred Regimenに追加されたこと、および本ガイドラインでも推奨される組み合わせ(AI)になったことは、HIV/HBV共感染者の治療においては注意が必要な点である。同Regimenでは抗HBV活性を示す薬剤が3TCのみとなることから、DTG+ABC/3TCのRegimenを選択する場合には、HBVの共感染の有無を慎重に検討した上で使用しなければならない。

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