XV医療従事者におけるHIVの曝露対策

11.各医療機関での確認事項

 HIV曝露後のマニュアルは各医療機関の院内感染マニュアルの一部に組み込まれるべきである。曝露後には該当医療従事者が速やかにそのマニュアルを見て、その後の対応に進めるようにする。医療機関ごとに確認しておきたい問題点は以下の3点である。

  • 曝露を受けた医療従事者が「HIV感染症」を現実的な可能性として考慮するかどうか。その可能性を考慮しない場合には曝露イベントへの対策がとられない可能性がある。
  • HIV専門家が院内に不在である可能性。
  • 院内に抗HIV薬が存在しない可能性。

 曝露医療従事者の対応に関する事項は、「曝露後対応が自施設内で可能な医療機関」と「曝露後対応が自施設内で不可能な医療機関」で異なることとなる。各医療機関の管理者は、曝露イベントが発生した場合に、迅速に院外のHIV専門家、院外の抗HIV薬と連携できる体制を準備しておかなければならない。しかし抗HIV薬に関しては、2時間以内に入手可能な方法が想定できない場合(特に時間外、休日)、最低限1回分を準備しておくことが望まれる。緊急避難として1回内服した場合には、その後の12時間または24時間の時間的余裕ができる。その時点でさらにベストな方法を考慮する。

 なお、HIV感染症に慣れない医療機関では曝露事象は「一大事」であるが、曝露者のプライバシーを保持することも非常に重要である。医学的な対応に必要な範囲を超えて曝露事象を伝える必要はない。「不必要に多数の管理者が集まって相談する」ということがないよう、マニュアルを整備しておく必要がある。患者のプライバシーのみではなく医療従事者のプライバシーも最大限守られなければならない。世界では15〜49歳において約0.8%がHIVに罹患していると推定され、米国では18〜59歳において約0.4%がHIVに罹患していると推定されている。日本では2015年までの累積数25,995人(死亡例は除かれていない)であり、概算では男性3,000人中1人、女性60,000人中1人の頻度となる(非診断数は含まれていない)。日本においてもHIV感染は現実的であり、HIV感染者が医療者であることも現実的である。曝露者のプライバシーを保持することの重要性の所以である。

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