XV医療従事者におけるHIVの曝露対策

12.参考資料:米国SHEA(The Society for Healthcare Epidemiology of America)における「HIV感染者が医療者として勤務する場合の考え方」

 世界ではHIV感染者が医療者として勤務することは普通に起こりうることである。本邦においてもHBV、HCV感染者が医療者として勤務することは普通のことであり、もちろんHIV感染者が医療者として勤務することもありうる。

 これまで、世界ではHIV感染医療者3人(看護師、整形外科医、歯科医)から患者8例へのHIV伝播が報告されている20)。1992年時点では、HIV感染外科医から患者への手術時でのHIV伝播の頻度は100万回中2.4〜24回と推定された21)。頻度が非常に少ないため、現時点まで本邦を含め世界的にはHIV感染者が行う医療行為の制限はされていない。

 米国SHEAにおいてはHIV、HBV、HCV感染者が医療行為をする場合の考え方を整理し発表している22)。基本は「HIV、HBV、HCV感染医療者の各ウイルス量を判断基準として、HIV、HBV、HCV感染医療者が可能な観血的処置の程度が決定される」という考え方である。米国SHEAの考え方は、「HIV感染医療者は、血漿HIVRNA量が500コピー/mL未満であれば、手術を含めた観血的処置が可能」とされている。米国の考え方を受けて英国では「HIV感染医療者は、血漿HIV RNA量が200コピー/mL未満であれば、手術を含めた観血的処置が可能」との考え方が提示されている23)医療機関はHIV感染医療者の医療行為の範囲を判定するためHIV感染医療者の血漿HIV RNA量を定期的に確認することが必要とされている(表XV-5)。

 本邦においてはまだ整理されていないが、今後はこのようなアプローチも選択肢の1つになると考えられる。

表XV-5 米国SHEAガイドライン
表XV-5-1 米国SHEAガイドラインにおけるHIV感染医療者に推奨される医療行為の範囲
血中HIV ウイルス量 医療行為の範囲(Category I、II、III) 制限 検査回数
500コピー/mL未満 全医療行為(I、II、III) 制限無 2回
500コピー/mL以上 リスクのない観血処置(I、II) 制限無 特になし
500コピー/mL以上 リスクのある観血処置(III) 制限有 特になし
表XV-5-2 米国SHEAガイドラインにおけるHBV感染医療者に推奨される医療行為の範囲
血中HBV ウイルス量 医療行為の範囲(Category I、II、III) 制限 検査回数
1万コピー/mL未満 全医療行為(I、II、III) 制限無 2回
1万コピー/mL以上 リスクのない観血処置(I、II) 制限無 特になし
1万コピー/mL以上 リスクのある観血処置(III) 制限有 特になし
表XV-5-3 米国SHEAガイドラインにおけるHCV感染医療者に推奨される医療行為の範囲
血中HCV ウイルス量 医療行為の範囲(Category I、II、III) 制限 検査回数
1万コピー/mL未満 全医療行為(I、II、III) 制限無 2回
1万コピー/mL以上 リスクのない観血処置(I、II) 制限無 特になし
1万コピー/mL以上 リスクのある観血処置(III) 制限有 特になし
Category I:血液媒介ウイルスが伝播する可能性がほとんどない(de minimis)医療行為
例)病歴聴取、診察、直腸診療、膣診療、通常の歯科処置、簡単な皮膚縫合、末梢血採取、下部消化管内視鏡、手術の監視、精神科的評価。
Category II:血液媒介ウイルスが伝播する可能性が理論的に存在するが稀な(unlikely)医療行為
例)局所麻酔下眼科処置、局所麻酔下歯科処置、歯周囲スケーリングやルートプレーニング、口腔小処置、局所麻酔下処置(皮膚切開、膿瘍ドレナージ、レーザー使用)、経皮的循環器処置、経皮的整形外科処置や整形外科小処置、経皮的ペースメーカー挿入、気管支鏡、硬膜外・脊椎麻酔ラインの挿入と維持、婦人科小処置、泌尿器科処置、上部消化管内視鏡、小血管処置、四肢を含む切断術、豊胸術等形成外科小処置、甲状腺摘出や生検、内視鏡的耳・鼻・咽頭手術、眼科手術、合併症のない経膣分娩の補助、腹腔鏡処置、胸腔鏡処置、鼻内視鏡処置、通常の関節鏡処置、動脈または中心静脈へのルート確保・維持・薬物投与、気管内挿管とラリンジアルマスクの使用、完全な消毒/ユニバーサルプレコーション/非鋭利物使用/手袋の交換を伴って実施する静脈または動脈アクセスの挿入と使用。
Category III:血液媒介ウイルスが伝播する可能性が存在する(definite risk)医療行為
例)通常手術、通常の口腔手術。

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