XV医療従事者におけるHIVの曝露対策

8.曝露後の抗HIV薬予防内服の効果

 ヒトにおけるHIV曝露後予防の効果を評価した報告は極めて少ない。職業上曝露によるHIV感染成立の頻度は約0.3%と低く、曝露後予防の効果を確認するための統計学的に有意なデータを得るには数千人に及ぶ曝露事例を登録した前向き研究が必要となる。医療従事者の後ろ向き症例対照研究によると、曝露後予防としてAZT(ZDV)を投与すると、HIV感染成立のリスクは81%(95%信頼区間= 43%〜94%)減少したという報告が1997年になされている18)。Cochrane reviewにおいては、曝露後予防としてAZT使用の有用性は示されたが、2剤以上の有用性を示す研究は認められなかった9)。しかし、曝露後予防に3剤以上の多剤用療法が実施されるようになってからは、職業曝露によるHIV感染はほとんど報告されていない。

 ガイドラインに示した曝露後予防対策が徹底されれば、職業的HIV罹患は「ゼロ」と言える可能性が高い。米国では毎年HIV罹患の経路が検討されているが、職業的HIV罹患は1999年以降報告されてはいない(図XV-2)19)(2008年の事例は研究室内におけるウイルス培養実験中の暴露事象)。ただし米国での報告は義務付けられてはいないため、その点には注意が必要である。欧州からもガイドラインの内容が浸透した後の職業的HIV罹患の報告はない。2000年以前の事象ではあるが、例外的に4件の3剤併用療法による曝露後感染予防失敗が報告されている。尚、その4例中3例では由来患者が薬剤耐性をもっていたこと報告されている6)。したがって、予防に使用する抗HIV薬を選択する際には、患者のHIVの薬剤感受性を考慮することが重要である。

図XV-1 1985年から2013までの米国での職業的HIV罹患例(58例)
(2008年の事例は研究室内におけるウイルス培養実験中の暴露事象)
縦軸がNo. of Confirmed casesで横軸が1985年から2013年までのYearの縦棒グラフ。縦軸の値は過去から順に、1985年に3件、1986年に5件、1987年に7件、1988年に6件、1989年に4件、1990年に6件、1991年に7件、1992年に8件、1993年に3件、1994年に1件、1995年に4件、1996年と1997年は0件、1998年に1件、1999年に2件、2000年から2007年までは0件、2008年に1件、それ以降の2009年から2013年までは0件となっている。(MMWR January 9, 2015)

PAGE TOP

アンケートにご協力ください。

このページは役に立ちましたか?

コメント