IX抗HIV薬の副作用
10.体重増加
INSTIを含む初回治療ではNNRTIやPIを含むレジメンよりも体重増加が大きいと報告されている81, 82, 83, 84, 85, 86)。INSTI間の比較では初回治療の無作為化臨床試験において、ベースラインからの平均体重増加はBICとDTGでは同等でEVG/cobiよりは大きかった81)。しかしながら、臨床コホートにおいて体重増加にはINSTI間の差は認められなかったという報告も出ている87)。NRTIでは、TAFを用いた初回治療ではTDFを用いたレジメンよりも体重増加が大きいという報告がある81, 82)。TDFからTAFに変更した場合にも特にINSTIとの組み合わせの場合に体重増加が大きく88)、また、変更後9か月間に体重増加が大きいという報告がある89)。INSTIとTAFの両方を含むレジメンへ変更した場合の解析で、INSTIへの変更とTAFへの変更は個別に体重増加に関連しており、変更後8か月間の大きな体重増加はINSTIに関連していて、その後の緩徐な体重増加はINSTIとTAFの併用に関連していたという別の報告がある90)。HIV非感染MSM(白人84%、黒人9%、アジア人4%)を対象としたPrEP(曝露前予防:pre-exposure prophylaxis)に関する研究において、48週後の体重はTDFではベースラインと変化なかったが、TAFでは1.1kgの体重増加が認められた91)。これについてはTDFで体重増加抑制効果が認められるのに比較してTAFでは一般人口の体重増加に近い体重増加を示すとする論文もある81)。NNRTIの中ではRPVの方がEFVよりも体重増加が大きい81) 。DORベースの3つの初回治療の臨床試験の解析(男性85%。白人63%、黒人20%)では96週での体重増加の平均値はDORベース治療、DRV+rtvベース治療、EFVベース治療でそれぞれ2.4kg、1.8kg、1.6kgと類似の結果であった92)。
抗HIV薬関連の体重増加は、治療開始時のCD4数が低値の場合に大きく、女性、黒人とヒスパニックで特に増加が大きい81, 82, 86, 93)ようだがメカニズムはまだ不明であり可逆的であるかどうかも不明である。HRD共同調査による日本人における治療開始後の体重の推移を図IX-5に示す94)。
ADVANCE試験(年齢中央値31歳)で最も体重増加の大きかったTAF/FTC+DTG群ではQDIABETESを用いた概算による10年後の糖尿病発症リスクは上昇すると予測され、QRISKを用いた概算では心血管リスクは上昇しないと予測された95)。D:A:D試験においてBMIの影響について検討したものでは、BMI増加に伴い糖尿病は増加したが心血管疾患は増加しなかった。INSTIを含むレジメンは含まれないデータであり、現代のレジメンにこの結果を適用することの可否は明らかでない96)。
図IX-5 日本人における治療開始後の体重の推移
体重の推移(インテグラーゼ阻害剤の有無別)
(調査期間:1997年8月から2020年3月)
2)治療経験が無く(naïve)かつINSTIの投与がある患者
† 本調査の登録時に抗HIV薬処方歴が無の症例(抗HIV薬併用療法の薬剤うち1剤でも変更された時点で脱落とし、experencedに移行)
※0ヶ月のベースラインはINSTIを問わず抗HIV薬の治療開始時点とした。
4)治療経験が有り(experienced)かつ本調査前及び本調査期間中においてINSTIの投与がある患者
† 本調査の登録時に抗HIV薬処方歴が有の症例または、naïveの患者において抗HIV薬併用療法の薬剤が1剤でも変更された症例
※0ヶ月のベースラインはINSTIを問わず抗HIV薬の治療開始時点または、初めて併用療法の薬剤が1剤でも変更された時点