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HOME > HIV診療における外来チーム医療マニュアル > 第4章 チーム医療に役立つ資料集

資料14)薬剤耐性検査

(1)薬剤耐性

HIVは変異を起こしやすいウィルスである。HIVは1日に1010ものウィルス粒子を感染者の体内で産生すると言われているが、同時に1日に3万~30万個の変異HIVが出現すると考えられている。そのため単剤治療を行うと、早いもので1~3週間程度で、感染者の体内においてその薬剤に対して耐性を持つHIVが現れてくる。現在日本でHIV感染症治療に用いられている抗HIV薬にはNRTI、NRTI、PI、IN、CCR5の5つのクラスがあるが、いずれの薬剤も耐性を誘導する事が知られている(図4-7参照)。HIVが薬剤に対して耐性を獲得する場合、ある1つの薬剤に対して耐性を獲得すると、同じクラスに属する別の薬剤に対しても同じように耐性を示す場合が少なくない。これを交叉耐性と呼びHIV感染症治療薬剤を変更する際に大きな制約となっている。現在の抗HIV感染症治療では複数のクラスから3種類以上の薬剤を組み合わせて使用する多剤併用療法(HAART)が用いられているが、強力な薬剤治療によってHIVの増殖を最大限に抑え、薬剤耐性HIVの出現を抑制するのがこのHAARTの最大の目的であり、初回治療でいかにしっかりとHIVを抑制するかが薬剤耐性HIVを出現させない大きな鍵となっている。

図4-7 抗HIV薬剤と誘導される耐性変異と耐性変異の読み方(例)
『HIV耐性検査ガイドライン Ver.4』より
図4-7 抗HIV薬剤と誘導される耐性変異と耐性変異の読み方(例)

(2)いつ薬剤耐性検査を行うか

薬剤耐性検査は初診時、服薬導入時、服薬継続時の3ヶ月~4ヶ月毎、治療開始後のウィルス抑制が不十分な場合及び服薬継続中に患者血中のウィルス量の上昇が見られた場合に行うことが推奨される。血中ウィルス量検査および薬剤耐性検査を行うタイミングについては、図4-8「HIVの経過と薬剤耐性遺伝子検査を行うタイミング」を参照されたい。薬剤耐性検査で捉えることができるのは、採血時に患者体内で増殖をしているHIVの遺伝子型の解析結果である。薬剤耐性を獲得したHIVは往々にして野生型にくらべると増殖力が弱いため、服薬を中断すると野生型の増殖が優勢となり薬剤耐性株が潜んでしまうことがある。このような場合は見かけ上、薬剤耐性変異が検出されないが、実際は薬剤耐性HIVが存在している。また治療薬剤の変更が複数回行われているような場合は検査時に服薬していない薬剤に対する耐性変異も検出されることがある。このようなことから、薬剤耐性検査の結果の判定を行う際には被験者のそれまでの治療例を十分に把握することが重要である。推奨される検査時期を図4-8「HIVの経過と薬剤耐性遺伝子検査を行うタイミング」に示す。

https://www.hiv-resistance.jp/index.htm参照

図4-8 HIVの経過と薬剤耐性遺伝子検査を行うタイミング
図4-8 HIVの経過と薬剤耐性遺伝子検査を行うタイミング

この図は典型的な薬剤耐性症例の経過と薬剤耐性遺伝子検査の実施ポイントを示したものである。

青実線:
治療が成功した時のVLの変動
赤点線:
治療開始後6ヶ月を経ても十分な治療効果が認められず、薬剤耐性が疑われる場合のVLの変動
赤実線:
一旦治療が成功しVLが検出限界以下に抑え込まれたが、その後再びVLが増加を始め、薬剤耐性の出現が疑われた場合のVLの変動

(3)薬剤耐性検査の保険収載について

従来、国立感染症第2研究グループ(グループ長杉浦亙)あるいは、一部の地域ブロック拠点病院が、薬剤耐性検査を受け付けていたが、平成18年度の診療報酬改定で薬剤耐性検査(HIV-1ジェノタイプ薬剤耐性検査)は保険収載された。

(4)他剤との併用禁忌と併用上の注意

抗HIV薬の併用禁忌薬一覧を表に示す。2種類以上の薬剤を併用すると、単独で用いた場合に較べ、作用の低下もしくは増強する場合がある。これを薬物相互作用という。注意すべき主な組み合わせと使用上の注意は以下の通りである。

表4-6 注意を必要とする主な組合せ等
組み合わせ 使用上の注意
AZT+d4T ・拮抗しあう
d4T+ddI ・副作用の発現頻度が高い―末梢神経障害、膵炎、高乳酸血症・妊婦で、脂肪肝、場合によっては膵炎も伴い、致命的ともなる重篤な乳酸アシドーシスが報告されている
FTC+3TC ・耐性プロフィールが近似・併用効果なし
RTVを併用しないDRV、SQV ・経口バイオアベイラビリティが低い
ATV+IDV ・高ビリルビン血症
妊娠第一期および妊娠可能な女性に対するEFV ・ヒト以外の霊長類で催奇形性が認められている
NNRTI 2剤併用 ・EFVとNVPを併用すると、併用しない場合に比べ副作用発現頻度が高い・EFV、NVPはETRの血中濃度を下げる可能性がある
(RTVを併用しないPI)+ETR ・ETRはPIの代謝を促進する可能性があり、至適投与量はまだ確立されていない
ATV+RTV+ETR ・ETRはPIの代謝を促進する可能性があり、至適投与量はまだ確立されていない
FPV+RTV+ETR ・ETRはPIの代謝を促進する可能性があり、至適投与量はまだ確立されていない
ddI+リバビリン ・ddIのリン酸化が促進され、副作用が強くなる可能性がある

表4-7 抗HIV薬相互作用表(併用禁忌)

核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)
一般名(略号) 併用薬 抗HIV薬への影響 併用薬への影響
ジドブジンAZT イブプロフェン 出血傾向が増強  
コンビビルAZT/3TC イブプロフェン 出血傾向が増強  
非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)
一般名(略号) 併用薬 抗HIV薬への影響 併用薬への影響
ネビラピンNVP ケトコナゾール
エチニルエストラジオール、ノルエチンドロン
血中濃度上昇 血中濃度低下
エファビレンツEFV シサプリド、トリアゾラム、ミダゾラム、酒石酸エルゴタミン・無水カフェイン、メシル酸ジヒドロエルゴタミン
マレイン酸メチルエルゴメトリン、マレイン酸エルゴメトリン、ボリコナゾール
血中濃度上昇 血中濃度低下
デラビルジンDLV リファンピシン
ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩、エルゴタミ酒石酸塩、ミダゾラム
血中濃度低下 血中濃度上昇
プロアテーゼ阻害薬(PI)
一般名(略号) 併用薬 抗HIV薬への影響 併用薬への影響
インジナビルIDV シサプリド、トリアゾラム、ミダゾラム、酒石酸エルゴタミン・無水カフェイン、メシル酸ジヒドロエルゴタミン、ピモジド、アルプラゾラム、塩酸アミオダロン、マレイン酸メチルエルゴメトリン、マレイン酸エルゴメトリン   血中濃度上昇
リファンピシン 血中濃度低下  
臭化水素酸エレトリプタン、アゼルニジピン、バルデナフィル、ブロナンセリン、シルデナフィル   血中濃度上昇
アタザナビル 高ビリルビン血症  
サキナビルSQV テルフェナジン、アステミゾール、シサプリド、ピモジド、アミオダロン、ベプリジル、フレカイニド、プロパフェノン、キニジン   心血管系副作用
エルゴタミン製剤   血中濃度上昇
リファンピシン 血中濃度低下  
トリアゾラム、ミダゾラム   持続的な鎮静
バルデナフィル   血中濃度上昇
リトナビルRTV 硫酸キニジン、塩酸ベプリジル、酢酸フレカイニド、塩酸プロパフェノン、塩酸アミオダロン、ピモジド、ピロキシカム、アンピロキシカム、酒石酸エルゴタミン、メシル酸ジヒドロエルゴタミン、臭化水素酸エレトリプタン、塩酸バルデナフィル、アゼルニジピン、リファブチン   不整脈、血液障害、血管攣縮など
マレイン酸メチルエルゴメトリン、マレイン酸エルゴメトリン  
ジアゼパム、クロラゼプ酸二カリウム、エスタゾラム、フルラゼパム、塩酸フルラゼパム、トリアゾラム、ミダゾラム   過度の鎮静
呼吸抑制
ボリコナゾール   血中濃度低下
ネルフィナビルNFV テルフェナジン、シサプリド、ピモジド、トリアゾラム、ミダゾラム、アルプラゾラム、バッカク誘導体、アミオダロン、硫酸キニジン   血中濃度上昇
リファンピシン 血中濃度低下  
臭化水素酸エレトリプタン、エプレレノン   血中濃度上昇
ロピナビル・リトナビル配合剤LPV/RTV シサプリド、ピモジド   血中濃度上昇
(不整脈)
酒石酸エルゴタミン、メシル酸ジヒドロエルゴタミン、マレイン酸エルゴメトリン、マレイン酸メチルエルゴメトリン   末梢血管攣縮
トリアゾラム、ミダゾラム   過度の鎮静
呼吸抑制
ボリコナゾール   血中濃度低下
バルデナフィル   低血圧
アタザナビルATV リファンピシン、プロトンポンプ阻害薬 血中濃度低下  
イリノテカン塩酸塩水和物   副作用増強
ブロナンセリン   血中濃度上昇
トリアゾラム、ミダゾラム   過度の鎮静
呼吸抑制
ベプリジル塩酸塩水和物、エルゴタミン酒石酸塩、ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩、エルゴメトリンマレイン酸塩、メチルエルゴメトリンマレイン酸塩、シサプリド、ピモジド、バルデナフィル   副作用増強
シンバスタチン   ミオパシー等
インジナビル硫酸塩エタノール付加物 高ビリルビン血症  
ホスアンプレナビルFPV シサプリド、ピモジド、ベプリジル塩酸塩水和物   血中濃度上昇
(不整脈)
エルゴタミン酒石酸塩、ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩、エルゴメトリン、メチルエルゴメトリンマレイン酸塩、メチルエルゴメトリンマレイン酸塩   末梢血管攣縮
トリアゾラム、ミダゾラム   過度の鎮静
呼吸抑制
バルデナフィル   低血圧
リファンピシン 血中濃度低下  
フレカイニド、プロパフェノン等   血中濃度上昇
ダルナビルDRV トリアゾラム、ミダゾラム   過度の鎮静
呼吸抑制
ピモジド   血中濃度上昇
(不整脈)
エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、エルゴメトリン、メチルエルゴメトリン   末梢血管攣縮
バルデナフィル   血中濃度上昇
シルデナフィル   血中濃度上昇
プロナンセリン   血中濃度上昇

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